双葉町長、区域再編を非難
福島原発ニュース
読売新聞 2012年1月31日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saitama/news/20120130-OYT8T01290.htm
2012年1月31日 国会原発事故調 「国民と思わぬ線引き」
国会の「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」による第3回委員会とタウンミーティングが30日、加須市内で開かれ、同市に役場機能ごと避難している福島県双葉町の状況を、井戸川克隆町長らから聴取した。双葉町民55人を含む福島県から避難する70人の住民が訪れた。
井戸川町長は、警戒区域などを年間被曝(ひばく)線量20ミリ・シーベルト以下で、生活環境が復旧すれば帰還できる「避難指示解除準備区域」など三つの区域に再編する政府の計画について、「一般生活では1ミリ・シーベルトを超えてはならないとされているのに、どうしてこういうことが言えるのか。双葉郡の住民を国民と思っていない線引きだ」と非難した。
また、「事故以前、東電と原子力安全・保安院に『原発が心配だ』と言い続けてきたが、必ず『心配ない。絶対安全だから』と言われてきた。事故は、町と町民に対する信義違反で、どんな言い訳も通用しない」と述べ、「解決するには、安全な場所と、従前に近い環境を準備して、(町を)元通りにして返すことが必要」などと訴えた。
国が双葉郡内への建設を要請している、放射性物質に汚染された土壌の中間貯蔵施設については、「外部に飛び散った放射能は、東電のものではないそうだ。
中間貯蔵施設に、持ち主がいないものを誰が受け入れられるのか」と述べ、改めて反対の姿勢を示した。
タウンミーティングでは、住民から国と東電への批判が続出。「3歳以下の子どもの内部被曝検査ができるよう、制度や法律を変えてほしい」との要望もあった。
また、委員の田中耕一・島津製作所フェローの「不安に思っていることは何か」との質問に、井戸川町長は年間被曝線量ごとの区域再編にふれ、「20ミリ・シーベルト以下なら住めるという判断。
1日も早く帰りたいという住民の思いは分かるが、線引きが、思いだけの問題で片付けられたのでは、将来に禍根を残す」と強調した。
終了後、記者会見した委員長の黒川清・元日本学術会議会長は「現場の感覚が、政府の言っていることと随分違うと感じた。被災者の声を報告書にどう反映させるか検討したい」と話した。
同委員会は、民間の有識者10人で構成。6月をメドに、事故の経緯や原因究明、改善提案などを盛り込んだ報告書をまとめ、衆参両院議長に提出する。