ドキュメンタリー:双葉郡出身の監督が防護服姿で撮影
福島原発ニュース
毎日新聞 2012年3月20日
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20120321k0000m040054000c.html
福島第1原発事故で故郷から引き離された福島県双葉郡の人々の現実を描いたドキュメンタリー映画「立入禁止区域・双葉~されど我が故郷」の無料上映会が20日、双葉の人々が避難生活を送る同県郡山市であり、招待された約60人が食い入るように見つめた。防護服で故郷に入って撮影した県立双葉高出身の映画監督、佐藤武光さん(63)は「映画を見て、全国の人が思いを共有してほしい」と訴えた。
「自己責任で双葉を撮りに行く」。昨年4月16日朝。防護服にマスク姿の佐藤さんが、警察官に何度も説明し、自分の車で検問を通過する。崩壊した道、倒壊した家屋、無人の街で飼い主を待つ犬を、カメラは捉える。
日大卒業後、映画の世界に生き、30年以上、故郷を顧みることはなかった。昨年3月末、双葉町民が埼玉県に避難すると、連日通ってカメラを回した。しかし、誰も双葉がどうなったかを知らず、現地入りを決めた。
「なんで自分の家に帰るのに警察に止められなくちゃいけないの」と仮設住宅で涙する同級生の妻。原発勤務25年の親友は原発から16キロの停電・断水した自宅で「原発は国の政策。責任は我々、避難民がとるのか」と酒をあおり声を荒らげる。昨年9月までに40人以上に取材した100時間以上の映像を98分にし、市原悦子さんがナレーションを付けた。
佐藤さんと地元の12人は双葉の現状を発信する「フクシマ・フタバ プロジェクト」を結成。映画はその第1弾だ。映画にも登場し、郡山市の仮設住宅で暮らす代表の天野正篤さん(74)は「1年たったが被災者は不安を抱える。中間処理施設などの問題もある。世に訴え、いい方に持っていきたい」と話す。
佐藤監督は「もう一つの放射能被害は『営みの破壊』。この先のことは誰も分からない。今後も撮り続け、現実を世界に知らしめていきたい」と話す。映画は東京「渋谷アップリンク」で公開中。
問い合わせは制作委員会事務局(03・3511・7030)へ。【鈴木泰広】