がれき再利用 一石二鳥なるか
福島原発ニュース
2012年5月25日
東日本大震災で出た膨大ながれきを再利用する試みが、県内で始まった。がれきを減らし、復旧・復興で不足する土を補う「一石二鳥」となるか――。
海岸から約1・5キロ離れた岩沼市の小さな公園。高さ数メートルの「丘」を造る工事が進む。重機を使い、盛り土に丸太を何本も「井」型に並べる。さらに木と土を幾重にも重ねた後、26日には苗木が植えられる。丘は土で覆われているが、コンクリートがれきを破砕したものが埋められている。
岩沼市では、津波で297ヘクタールの海岸防災林が浸水し、流木が被害を強めた。このため、市は津波の威力を減らそうと、国直轄の防災林とは別に、やや内陸に高さ10~15メートルほどの丘を20カ所ほど造り、その上に防災林を造る構想を立てた。
公園の丘は、がれきでも苗木がうまく育つかどうか調べる実験場だ。井口経明市長は「がれきといっても市民には価値あるもの。燃やすより生かして、次世代に引き継ぎたい」と言う。
県内のがれきの総量は1820万トン。県が市町から処理を受託した分は1107万トンだったが、改めて総量を調べ直した結果、676万トンに減った。被災家屋が修理されたり、がれきが思ったよりも海に流出していたりしたためだ。
県外での「広域処理」が必要な量も、当初推定の354万トンから127万トンに減った。それでも、県内で処理する量は膨大だ。
がれきにはコンクリート片や流木もあれば、漁網のような廃棄物もある。このうち、分別した後に燃やしたがれきの焼却灰を再利用する動きもある。
石巻港の焼却プラントを請け負う大手ゼネコン鹿島などは、焼却灰にセメントを混ぜて5センチほどの粒状にし、埋め立て資材に使おうと実験中。うまくいけば、岸壁そばの海を10ヘクタール埋め立てるのに使う。
県幹部は「元々、工業用地として埋める予定だった。一石二鳥だ」。そもそも、プラントがある敷地も、コンクリートがれきを小さく砕いたものを埋めて地ならしをした。
再利用の壁になりかねないのは放射性物質だが、石巻市や女川町では、広域処理に向けた検査で周囲の環境と変わらない線量と確認。焼却灰については、灰の量がたまるまで1カ月ほど待ってから測る方針だ。
県のがれき担当者は「コンクリートがれきや土砂の大前提はリサイクル。焼却灰もできるだけ建設資材にしたい」と話す。復旧・復興事業に必要な土が不足する心配があるからだ。
4月17日のがれき処理に関する閣僚会議では、平野達男復興相も「盛り土をどこから持ってくるか、ネットワークを作らなければならない」と指摘した。
地盤沈下した港を埋め戻したり、沿岸部を走る道路を「第2の防波堤」にすべくかさ上げしたりするには、大量の土が必要。沿岸部の被災地では、小さく砕いたコンクリートがれきの「貯蔵」も始まっている。
政府も、がれきの再利用には積極的だ。
林野庁は、海岸防災林を復旧させるため、沈下した地盤を埋め戻す材料に瓦や陶器くずを使ったり、表面には木くずもチップにして使ったりする。野田佳彦首相も4月、青森県から千葉県までの被災した防災林140キロでがれきを再利用すると表明した。国土交通省は、公共工事で業者ががれきから出来たセメントを使えば入札で優遇する。(福島慎吾、蔵前勝久)
朝日デジタル
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