東日本大震災 歩む・福島県いわきだより フラダンスで生きる力
福島原発ニュース
毎日新聞 2013年02月22日
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130222ddm012040008000c.html
福島県いわき市小名浜の山口仁美(ひとみ)さん(18)は映画「フラガール」に憧れ、高校時代の3年間、ダンス中心の生活を送った。県立小名浜高校で同級生と結成したチーム「ヒワラニ・カイカマーヒネ(魅力的な少女)」は、同市で昨年8月にあった「フラガールズ甲子園」で躍動的な踊りが評価され、2年連続で優秀賞に輝いた。地元では有名人になった。「町で知らない人から『ひーちゃんだ』って言われるのが苦手」と笑う。
物心ついた頃、両親が離婚した。小学1年の時、男子に「なんで父ちゃんいねーんだ」と言われても、「おめーにかんけーねーだろ」と返す勝ち気さがあった。中学卒業後、フラ教室に母美千代さん(40)と一緒に通い実力をつけていった。働きづめだった母が、送迎や衣装作りなどマネジャー役として支えてくれた。
生まれ育ったいわき市沿岸部は東日本大震災の津波にのまれた。多くの友人や知人を亡くした。東京電力福島第1原発事故で1カ月間、群馬へ。いわきに戻り、避難所や高齢者施設などをフラダンスで慰問した。「認知症のお年寄りが、私たちの踊る姿を絵に描いてくれたんです。ダンスは人に生きる力を与えるんだ」
昨秋挫折を味わった。ダンサー養成学校・常磐音楽舞踊学院に不合格。母に申し訳なく、自分を責め続けた。だが母は「今はゆっくり休んだらいいんだよ」と抱きしめてくれた。「絶対あきらめない」と思った。