原発事故映画を14日から上映 「朝日のあたる家」
福島原発ニュース
2013年9月13日
原発事故で古里を追われた家族を描く映画「朝日のあたる家」が十四日、豊川市のコロナシネマワールドを皮切りに全国で上映される。製作費は寄付に頼り、大手映画館には上映を断られた。太田隆文監督(52)は「反原発だけを言うわけではない。事故が起きて失われるのは家族のいる平凡な生活。それに気付けば社会は変わるはず」と語る。
◆1年かけて取材
物語の中心は、田舎で暮らすイチゴ農家の両親、娘二人の四人家族。地震が起きて近くの原発が爆発。放射能が拡散し、一家は避難を強いられる。半年後に帰宅できたが、滞在はわずか数時間。就職後に都会暮らしを夢みていた大学生の長女も古里にもう帰れないことに気付く。
青春映画を手掛けてきた太田監督は、福島第一原発事故で十万人以上が故郷に帰れない現実を見て、製作を決めた。一年かけて福島県や全国の原発に足を運び、取材を重ねた。
「自分の古里で事故が起きたらと考えてもらうため」と、どの地方にもありそうな日本の田舎の風景を求め、撮影で訪れたことのある静岡県湖西市をロケ地に選んだ。脱原発を訴える俳優の山本太郎さん(現参院議員)の出演も決まった。
だが製作費が集まらない。映画会社などからは「原発映画は無理」などと敬遠された。寄付を募り、脱原発を唱える三上元・湖西市長の協力も得て一千万円を集めた。市内でオーディションを開き、エキストラを含む三百人が出演した。
◆大手には断られ
今年三月に撮影を終えたが、今度は上映館が決まらない。商業映画は東京から上映していくのが一般的だが、大手に軒並み断られ、コロナグループ(小牧市)が「社会問題として観客に考えていただければ」と最初に上映することにした。全国の独立系映画館なども引き受け、最終的には二十五館で上映される見込み。
五月には、米国であったジャパン・フィルム・フェスティバルで上映され、六月の湖西市での完成披露上映会には二日間で三千人が訪れた。
「皆でお好み焼きを食べて記念写真を撮ったときが一番幸せだったね」。白血病を患った中学生の次女が母親に話す場面がある。実際の震災報道で、両親を亡くした少女が口にした言葉を生かした。
太田監督は「古里を奪われ、いまだに帰れない福島の人を軽んじる人がいる一方、この映画に寄付をして応援してくれる心ある人がたくさんいる。そこに社会を変えられる希望を感じる。家族、古里の大切さを見つめ直すきっかけにしてほしい」と話す。
豊川のコロナでの上映は二十七日まで。十四、十五日は太田監督のトークもある。県内ではこのほか、半田市と名古屋市中川区のコロナで、それぞれ二十一日と二十八日から上映される。いずれも鑑賞は有料。
(曽布川剛)
中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20130913/CK2013091302000050.html