【原発事故の風刺画】海外への広報強化を(9月17日)
福島原発ニュース
福島民報 2013年09月17日
http://www.minpo.jp/news/detail/2013091710921県民の神経を逆なでするようなニュースが、またもや海外から飛び込んできた。フランスの週刊新聞が11日付の紙面で、東京電力福島第一原発事故の風刺画を掲載した。気の利いた風刺というより、悪意が感じられる作品だ。
韓国による本県など8県の水産物全面輸入禁止措置とともに憂慮しなければならない。政府は海外における風評被害にしっかりと目を向け、諸外国に正しい知識を広めるため努力すべきだ。
問題の風刺画は「カナール・アンシェネ」紙に掲載された。放射線による人体への影響を大げさに表現したのだろう。3本の手や脚を持つ力士が土俵で向かい合っている。傍らではテレビリポーター風の人物が「フクシマのおかげで相撲が五輪種目になりました」と話している。背後には、壊れた原発の建屋と思われる建築物が見える。
別の作品は「五輪のプールはもうフクシマに」のタイトルで、プール脇に防護服を身に着けた人物2人が立っている。水が放射性物質で汚染されていることを強調するためか、手にした線量計のような機械からうるさく音が鳴っている。
風刺画は社会や人物を遠回しに、手厳しく批評する芸術だ。時には政界や経済界の権力者を皮肉り、弱者である一般庶民の不平や不満を解消する役割を果たしてきた。だが、これらの作品で風刺の対象にされているのは、原発事故や風評で苦しむ本県であり、決して権力者ではない一般の県民である。
同紙は「謝罪するつもりはない」と日本政府の抗議を一蹴した。100年近い歴史を誇り、反権力の記事が知識人から高い評価を得ているといわれる名門紙だが、風刺の意味をはき違えていると断じざるを得ない。
同じフランスの国営テレビが、サッカー日本代表のゴールキーパー川島永嗣選手を原発事故に絡めて侮辱したのは昨年10月だ。腕が4本ある合成写真を映し、司会者が「福島(第一原発事故)の影響ではないか」とやゆし、被災地の反発を呼んだ。1年近くたっても、正しい理解が進んでいないことになる。
原発事故を見る海外の目は厳しいだけでなく、誤解や無知、偏見が入り交じる。韓国の水産物全面禁輸措置にしても、科学的に妥当な判断か疑問だ。ただ、手をこまねいていては県民に対する国際的な差別意識が醸成されかねない。政府は諸外国に対しての広報を強化し、科学的裏付けを示し続けていかなければならない。(酒井 俊一郎)