作業員にあったか支援を 元東電社員が呼びかけ
福島原発ニュース
毎日新聞 2014年01月07日
福島第1原発で冬季も廃炉作業を続ける作業員に暖かい肌着や使い捨てカイロを贈ろうと、元東京電力社員の吉川彰浩さん(33)=福島県いわき市=が中心となり、募金活動に取り組んでいる。同原発では作業員の士気の低下や相次ぐ人為的ミスが問題になっているが、吉川さんは「事故の収束には作業員の労働環境の改善が不可欠」と説明。昨年11月には東京都青梅市で講演会を開き、「社会が関心を持ち続けることで国や東電も待遇改善に動くはず」と作業員への支援を訴えた。【前谷宏】
防護服に防寒性なく
吉川さんは高校卒業後、東電に入社し、福島第1、第2原発で計14年間、保全業務などを担当。大震災では第2原発で被災し、泊まり込んで収束作業に当たった。
東電に対する批判が強まり、低賃金や劣悪な労働環境にも耐えられず、同僚の社員や作業員が辞めていった。吉川さん自身、東電と直接関係のない親族が避難先で嫌がらせを受けたこともあった。
「東電の社員として事故を防げなかった罪悪感はある。だが、誰かが外部から現場の実情を伝えて待遇を良くしなければ、廃炉の担い手がいなくなる」。吉川さんは2012年6月に退社し、現場への支援を求めて講演活動を始めた。
第1原発の廃炉作業は3度目の冬を迎えている。作業員の着る防護服には防寒性がない。だからといって、内側に厚い防寒具を着込むこともできない。「せめてカイロや保温性の高い肌着を贈ってあげたい」。吉川さんは昨年11月、友人らと「アプリシエイト・フクシマ・ワーカーズ」(AFW)という任意団体を設立し、募金への協力を呼び掛けた。
「福島第1原発は今でも世界で一番危険な原発。東電や国に任せるだけでなく、社会全体で作業員を支えないと、数十年続く廃炉作業を次世代に引き継げなくなる」と訴える。
寄付の目標はカイロ30万個と機能性肌着3000着(計約1000万円相当)。これまでに700万円以上が集まった。振込先などの詳細はAFWのホームページ(http://yoshikawaakihiro.sakura.ne.jp/index.html)。