「甲状腺検査 支援を」
福島原発ニュース
朝日新聞 2012年4月16日
http://mytown.asahi.com/kyoto/news.php?k_id=27000001204160003
■子ども対象 避難の母親要望■
東京電力福島第一原発の事故の影響で府内に避難している母親たちから、子どもの甲状腺検査への支援を求める声が上がっている。福島県では18歳以下の全員を対象に無料検査が始まったが、他府県の避難者は支援が遅れたり枠外に置かれたりしている。
府「単独対応難しい」
伏見区の京都城南診療所で先月18日、府内へ避難した35世帯の子ども50人が、甲状腺の被曝(ひばく)線量を調べる超音波(エコー)検査を受けた。福島県郡山市から今年2月に伏見区に避難してきた女性(27)は、7カ月の長女を連れてきた。
「成長への影響がないか心配。これからも定期的に、できれば無料で検査を受けられるようにしてほしい」と話した。
乳幼児は、甲状腺へのヨウ素の吸収が活発で、被曝線量が成人より高い傾向があるとされる。1986年のチェルノブイリ事故の後、子どもの甲状腺がんが多発して問題になった。
この日の検診は、診療所が無料で実施。診療所が加盟する京都民主医療機関連合会が1人約1万円の費用を負担した。診療所の尾浦邦彦・専務事務長(55)は「本来は行政がすべきだが、動きを待っていられない」と語る。
福島県は昨年10月、0~18歳の県民36万人を対象に、甲状腺の被曝線量の調査を始めた。本人や保護者に安心してもらうことなどが目的で、費用は県が負担。約2万人の県外避難者も対象だが、県外での受診が実現するまでには、しばらく時間がかかるという。
現在、甲状腺の被曝線量の調査を委託する医療機関を各都道府県にひとつ以上、指定する作業を進めている。だが、県の担当者は「機器の精度や費用の問題を詰める必要があり、拙速にはできない」と話す。
ほかの被災県などでは甲状腺の被曝線量調査は進んでいない。13歳から6歳まで3人の子どもを連れて、福島県に接する茨城県北部から伏見区に避難している女性(45)は、検査を受けさせたいが、県は「現段階では必要ない」との判断だ。宮城県は「検査でむやみに不安をあおるより、安心だと呼びかける方が大事だ」としている。
避難者の受け入れ側の京都府も「大規模かつ広域の災害に府だけで対応するのは難しい」との姿勢だ。
こうした中で、独自に支援に乗り出した自治体もある。福島県と接する宮城県丸森町は、県外避難者を含む18歳以下の2200人を対象に甲状腺検査を実施する。1千万円を新年度予算に計上した。栃木県那須町も18歳以下の希望者に無料で甲状腺検査をする方針。丸森町の担当者は「住民の被曝への不安は、検査することでしか消せない」と話す。