コメの味に悪影響が出ないことを祈る。もう一度、食べた人の笑顔が見たい
産経ニュース 2012年6月4日 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120604/dst12060407030000-n1.htm 福島県中部に位置する二本松市の山あい。斉藤登さん(53)はトレードマークのバンダナを頭に巻き、トラクターで「代かき」と呼ばれる水田の土を混ぜる整地作業を行っていた。充血した目をこすりながらハンドルを握る。 斉藤さんが経営する「二本松農園」は東京電力福島第1原発の北西約50キロにある。今年3月、コメ農家の一部が昨秋に収穫した米から、基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を超える放射線が検出されたため、作付けできるかどうかが気が気でなかった。 福島県農業総合センターが昨年末、「ゼオライト」という鉱石による放射性セシウムの吸着実験を行ったところ「低減効果がみられた」との結果を出した。 県はゼオライトを農地に散布する手法を推奨。その粉末を1ヘクタール当たり200キログラム散布することになった。 斉藤さんは「よく分からないカタカナの物質を自分の田んぼにまくのは、気が引けた」と苦笑しながらも、トラクターに噴射器を積んで4ヘクタールの水田に散布した。仲間の農地も除染したため約1カ月を費やし、代かきの開始はその分遅れた。畑も3ヘクタールあり、手入れする余裕がない場所は草が伸び放題になっている。 「除染の物質で味に悪影響が出ないことを祈っている。もう一度、食べた人の笑顔が見たい」