看護師の卵が支える健康調査(震災取材ブログ)
福島原発ニュース
時事ドットコム 2012年7月4日
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012070400087
福島県は東京電力福島第1原子力発電所の事故で放出した放射性物質の影響を調べる県民健康管理調査を続けている。約200万人の全県民を対象に外部被曝(ひばく)線量などを推定する調査だが、推定に必要となる問診票の回収が思うように進んでいない。回収率の向上に一役買おうと、看護学校の学生が仮設住宅を訪問している。
福島県県民健康管理調査のお願いで仮設住宅を訪問する、看護学生の小野いずみ(右)さんと上遠野奈々さん(左)。
「おはようございます。県民健康調査のお願いです」――。
双葉町と浪江町からの避難者が生活する福島市の仮設住宅。福島県立総合衛生学院の看護学生、小野いずみさんと上遠野奈々さんは仮設住宅の玄関先に立ち住民に声をかけた。手にした健康調査の問診票を見せながら提出したかどうかをたずねる。玄関に顔を出した女性は提出したかどうか分からないと応え、改めてコールセンターに問い合わせることになった。住民の中には事故後、複数の避難所を転々と移った際に様々な資料の提出を求められたため、問診票を提出したかどうか分からない人も少なくないという。
問診票の回収率は約22%にとどまっている。福島第1原発に近い相双地区では40%に達しているものの、放射線量が低く健康不安への関心が薄い会津地域では14%しかない。看護学生がボランティアとして訪問を始めたのは4月から。学生が参加する理由について福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センターは「避難者にとって学生さんの方が話しやすい場合もある」と説明する。6月23~24日の2日間に延べ12人の学生が3カ所の仮設住宅(計397世帯)を訪問したところ、新たに約40人から問診票を回収できた。
小野さんは「看護学生としてできることがあると思って参加した。心に寄り添える看護師になりたい」と話す。上遠野さんは「避難された方々は(事故直後の様子を)思い出したくないかもしれないと感じた。心の痛みが分かる看護師を目指したい」と語った。
放射能による健康への不安は長い期間にわたる。看護学生のボランティアは今後も続ける予定で、看護師の卵による地道な活動が福島県民の健康を支えていく。(竹下敦宣)