福島第1原発事故:東電独自、賠償打ち切りに基準
福島原発ニュース
毎日新聞 2012年10月17日
http://mainichi.jp/select/news/20121017k0000e040225000c.html
東京電力福島第1原発事故で避難指示を受けた被災者の女性が結婚を理由に精神的賠償を打ち切られた問題で、東電は、避難指示を受けていない男性との結婚や、結婚後に福島県外に転居したことを打ち切りの基準にしていることが分かった。東電が取材に判断基準の一例として明らかにした。これらを基に「帰宅する意思がない」「生活基盤が整った」と判断、賠償を打ち切っているとみられる。
毎日新聞の取材によると、双葉郡に実家があり、同県中部の仮設住宅に住んでいた30代の女性のケースでは、結婚相手は避難指示区域ではない同県須賀川(すかがわ)市の男性だった。東電の賠償受付窓口に結婚後の精神的賠償について問い合わせた別の女性は、担当職員から「同じ被災者の男性との結婚なら打ち切らない」と言われたという。いずれも東電が明らかにした基準と合致する。
30代女性の母親は「好きになった人がたまたま県外の人だったり、結婚相手の都合などで県外に転居したら、精神的損害はなくなるというのか」と疑問を投げかけた。
賠償範囲を定めた文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会の中間指針(昨年8月)に結婚に関する規定はなく、同省や賠償状況を監督する経済産業省資源エネルギー庁も「結婚で精神的損害は消えない」と批判。憲法は「居住移転の自由」(第22条)と「婚姻の自由」(第24条)を保障しており、結婚相手や新居によって賠償の対応に差を付ける東電独自の基準は、基本的人権との関係でも論議を呼びそうだ。【栗田慎一】