震災世代 木質バイオマス推進の長谷川順一さん
福島原発ニュース
産経ニュース 2012年12月11日
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121211/elc12121102190042-n1.htm
■再生エネ 政治は具体策を
東日本大震災後の不自由な日々は、日常生活の基本となるエネルギーのあり方を考えるきっかけになった。長谷川順一さん(32)は、仲間とともに「なつかしい未来創造」という会社を震災後に立ち上げ、地元である岩手県陸前高田市周辺の森林資源を利用した復興に取り組んでいる。エネルギー問題は主要テーマの一つだが、「原発ゼロ」ばかりを主張する政党には疑問がある。だからこそ政治には、「再生可能エネルギーの推進策を具体的に示してほしい」と考える。(渡辺陽子)
同市と大船渡市、住田町の気仙地区は、森林が面積の7、8割を占める”森林大国”。しかし、林業は衰退の一途をたどっている。だからこそ、樹木の伐採などで発生する未利用の木材などをエネルギー源として活用する「木質バイオマス」を用いたまちづくりは、林業を軸にした地域経済の再構築につながると長谷川さんたちはみている。
大規模ではないかもしれないが、安定した産業が地域に根付き、雇用創出も期待できる。「エネルギー転換の機運が高まる今こそ、弾みをつけたい」というのが、長谷川さんの思いだ。
仕事の傍ら、賛同する若手経営者らと話し合いを重ね、開発した小型のペレットストーブを各地のイベントに持ち込んでPRするなど、まずは再生可能エネルギーに関心を持ってもらう活動を進める。
だが、「太陽光」などに比べ、「木質バイオマス」は耳慣れない。ペレットを使ったストーブは、家庭用に設置すると1台30万円近くかかるものもあるという。日常生活に取り入れるには敷居が高く、普及にはほど遠いのが現状だ。
活動を通じて、理想と現実の乖離(かいり)が大きいことを体感する長谷川さんたちは、政治に物足りなさを感じている。政治家は「エネルギー施策の転換」「再生可能エネルギーの普及」を口にするが、具体的な内容が伴っていないと考えている。
福島第1原発事故を受けて、政府は「原発ゼロ」を掲げ、今回の選挙でも同様の主張をする政党は多い。だが、長谷川さんは「反原発、脱原発という言葉は派手だが、解決策を示さないままでは何の意味もない」と冷静だ。「新エネルギーについて、国が主導して幅広く技術開発の推進や周知活動に乗り出す時期だ。政治にはリーダーシップを発揮してほしい」と次政権に思いを託した。
11日で東日本大震災から1年9カ月がたった。震災後、初の国政選挙となった衆院選。日本の方向性を決める転換点になり得る今回の選挙に、これからの被災地を担う20~30代は何を託すのか。大型企画「震災世代」の選挙編を掲載する。