シリーズ「食べ物の放射能を測る」～おにぎり編～（１）

福島原発ニュース

読売新聞より転載

読売新聞　2012年6月8日

今回は、コンビニエンスストアの「ツナマヨネーズおにぎり」を測定してみることにした。

コンビニのおにぎりは誰しも、食べたことがあるだろう。ツナマヨおにぎりは、その代表格とも言え、売れ筋商品の一つだ。牛丼を測った前回と同様、東京都国分寺市にある「こどもみらい測定所」に測定を依頼。大手コンビニ３社のツナマヨおにぎりを購入し、測定所に持ち込んだ。

測定は４月２５日と５月２日、「ＮａＩ（ＴＩ）シンチレーションスペクトロメータ」という測定器で行った。計測には約１キロのおにぎり（約１０個）が必要だ。それをミキサーにかけ、専用の容器に詰めて測った。

３社のおにぎりをそれぞれ２～６時間程度かけて測定したところ、１社のコンビニのおにぎりが、少し反応を示した。１８時間かけて再度、測ったところ、微量の放射性セシウムが検出された。

ＮａＩ（ＴＩ）シンチレーションスペクトロメータは、放射性セシウムと、エネルギーの強さが近似している、ほかの核種（放射性物質）との判別が難しく、放射性セシウムの量を正確に測れないことがある。そこで、高性能な「ゲルマニウム半導体検出器」という装置で測定してみることにした。

検査は、民間の検査機関に依頼した。計測には２キロ分の試料が必要になる。こどもみらい測定所で測った約１キロのおにぎりに加え、製造工場が同じツナマヨおにぎりを、同じ日にさらに約１キロ分、追加購入した。

検査機関で１時間、装置にかけて測定してもらった。その結果、セシウム１３４が１キログラム当たり０．４ベクレル、セシウム１３７が同０．７５ベクレル検出された。このツナマヨおにぎりには、１キログラム当たり計約１ベクレルの放射性セシウムが含まれていたというわけだ。

厚生労働省が２０１２年４月に定めた一般食品の放射性セシウムの基準値は１キログラム当たり１００ベクレルだ。この数値は、１年間の食品からの被曝量の上限を１ミリシーベルトとし、それを基に割り出されている。

今回の測定結果では、ツナマヨおにぎりに含まれる放射性セシウムは、この基準値の１００分の１程度ということになり、極めて低いと言える。毎日、大量のツナマヨおにぎりを食べ続ければ話は別だが、そうでもしない限り、健康への影響は極めて少ないだろう。とは言え、放射性セシウムはゼロではなかった。微量ながら食品が汚染されている。今の日本の現状が示された形だ。

１ベクレルは、どの原材料によるものなのだろうか。その手がかりを探るべく、このコンビニエンスストアに話を聞いてみようと考えた。測定結果を伝えた上で取材を申し込むと、社名を出さないことを条件に応じてくれることになった。