住民合意で優先除染 公園、神社、遊び場…、敷地内に一時埋設
福島原発ニュース
福島民報 2012年09月18日
http://www.minpo.jp/news/detail/201209183702福島市で住民が公園や集会所、神社など優先的に除染を希望する場所を選び、要請を受けた市が除染を進める動きが広がっている。「仮置き場」がなくても住民らが地域の合意を得て、除去した土壌を敷地内に一時的に埋設し、保管することでスピードアップを目指す。早急な除染と伝統の祭りや地域の絆を守りたいという住民の思いが追い風となり、既に29カ所が選定された。仮置き場確保が難航し除染が滞る中、「福島方式」として注目を集めそうだ。
福島市岡山では840年の伝統を誇る県の重要無形民俗文化財「水かけ祭」を開催するために会場の鹿島神社の除染に着手した。昨年は東京電力福島第一原発事故の影響でやむなく断念したが、今年は10月28日に例年通りの開催を決定。鹿島神社総代長の斎藤巧夫さん(79)は除染と境内への埋設に向け住民の合意を取り付けた。「神社の線量は比較的高く、除染が必要だった。伝統を絶やさず、若者たちに伝えていくために今年はどうしても開催したかった」と明かす。
福島市は、「ふるさと除染実施計画」に基づき、優先順位を付けて面的除染を進めているが、着手まで数年かかる地域もある。このため住民の目線で優先的に除染が必要な線量の高い場所を指摘してもらい、先行して除染を進める「地区ホットスポット除染事業」を独自に始めた。
支所ごとに町内会やPTAなど地域住民でつくる「放射線等対策委員会」を設立し、委員会が伝統的な催事の会場や子どもの遊び場など公共性が高い場所を選定。地域の合意を得た上で、仮置き場が完成するまで除去した土壌を選定した場所に埋設し、保管している。市は今年度の事業費として5億円を計上し、8月末までに29カ所を事業箇所に決定した。既に12カ所で除染作業を実施した。特に祭りの準備に向け夏以降、事業箇所が大幅に増えている。地域に伝わる伝統の祭りを守り続けたいとの思いから、いち早い除染を望む声が事業を後押し。除去土壌の一時的な保管についても住民の合意形成が進んだ。
同市松川町では高並公園、原中集会所、原中公園を除染し、除去土壌を敷地内に埋めた。原中町内会長の渡辺幸雄さん(72)は「震災以降、外で遊ぶ子どもの姿が減った。埋設することに不安を抱く人もいたため、苦しい選択だったが、子どもの歓声が戻り地域の絆を守るのに役立った」と話している。今後さらに20カ所以上の事業実施が見込まれる。市危機管理課の担当者は「市民も早急な除染を望んでいる。一時的でも保管場所が決まることで除染が進む意義は大きい。さらに理解が深まり、仮置き場設置につながれば」と「福島方式」の一層の拡大に期待している。