【福島第1原発の現状】(2014年6月23日)正念場迎える汚染水対策 巨大な土木工事現場 作業員倍増、6千人に
福島原発ニュース
47 NEWSより転載 2014年6月2日
東京電力福島第1原発で汚染水対策が本格化し始めた。作業員は昨年より倍増し約6千人に。構内はクレーンが林立、重機が行き交う巨大な土木工事現場と化している。放射線量が依然高い現場に入り、”汚染水との闘い”の 進捗 (しんちょく) 状況を見た。
「放水開始します。3、2、1」。20日午前10時すぎ、免震重要棟の遠隔監視室で、東電の担当者がパソコンを指さしながら操作すると、画面に「放水」の文字が赤く表示された。
原子炉建屋の汚染水と混ざる前の地下水を海に流す「地下水バイパス」。12本の井戸でくみ上げた地下水は5月下旬から6日おきに海に放出されている。
東電は建屋への流入量を400トンから最大約100トン減らせると見込み、これまでに計7千トン近くを放出。だが経済産業省資源エネルギー庁の 木野正登 (きの・まさと) 汚染水対策官は「問題は放出量じゃなく地下水位。水位が下がらない井戸が2本あり、そこでは流入量は減っていない。バイパス効果は1、2カ月待たないと分からない」と説明した。
全面マスクに防護服の姿で小型バスに乗り、汚染水からトリチウム以外の放射性物質を除去する「多核種除去設備(ALPS)」に移動した。
建物に入ると、迷路のように入り組んだ配管が目に入った。除去した放射性物質をためる銀色の金属製容器がずらりと並び、「エリア内汚染有」の注意書きが張られる。
昨年3月に試運転を始めたが、フィルターの不具合や配管腐食などトラブルが頻発し、本格運転に移れないままだ。
しかし東電は本年度中に汚染水約36万トンを浄化する方針。9月末までにALPSを増設するほか、除去した放射性廃棄物量を20分の1に減らす「高性能ALPS」建設も急いでいる。
防護服に入れた3個の保冷剤の効果が減り、全身汗だくになったころ、汚染水対策の”切り札”とされる「凍土遮水壁」の工事現場に着いた。
建屋近くに掘削機が並び、凍結管を埋設するため、深さ約30メートルの穴を掘る作業が黙々と行われていた。
工事は今月2日に始まり来年3月の凍結開始を目指すが、木野氏は「約1・5キロの地中を凍らせる前例のない大規模工事で、放射線との闘いでもある」と指摘する。
現場付近の線量は最大で毎時1ミリシーベルトにも。事故当時に散乱したがれきの影響で線量が高く、作業員は重さ約6キロの金属製ベストを着用。周辺では放射線を遮る金属板の設置も進められていた。
木野氏は「ここでは1日3時間程度しか働けない。被ばく対策と作業員の確保が今後の大きな課題」と語る。
他にも数多くの工事が進められ、国内に6、7台しかないという巨大クレーンも3台稼働していた。
「作業員数はここ1、2年がピーク。休憩スペースや保冷剤、洗濯も追いつかない」と話す東電担当者。木野氏も「本年度はまさに汚染水対策の正念場。とにかく、やれることをやっていくしかない」と語った。
(共同通信)