仕事やめ被災地の前線へ 外国人ボランティアの献身
福島原発ニュース
日本経済新聞 2012年3月14日
http://www.nikkei.com/life/living/article/g=96958A9C93819499E3E1E2E2918DE3E1E2E1E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2
米軍のトモダチ作戦、台湾などからの多額の寄付――。昨年の東日本大震災の際に、多くの国・地域から被災地に寄せられた支援が、今なお絶えることなく続いている。被災地には連日、外国人ボランティアが訪れ、次の支援活動を計画する団体や個人も多い。「あの日を忘れない」外国人ボランティアの今を追った。
「自分のできることで、できるだけ長く被災者をサポートし続けたいと思った」。米カリフォルニア州からやってきたバートン・スーさん(39)とキャサリン・スーさん(32)夫妻は、今年1月から岩手県一関市でフラダンスや絵で被災者の心をケアする活動を続けている。きっかけは昨年5月にボランティアとして日本を訪れたこと。被災した人々の心が深く傷ついているのを実感し、1年間の予定で日本に戻ってきた。
■経済損失約2500万円
簡単な決断ではなかったはずだ。バートンさんはソフトウエアエンジニア、キャサリンさんは企業の人事担当者の仕事を辞め、車も売った。夫妻が日本に来なかった場合に得ていた年収と、来日中の出費をあわせると、経済的損失は約30万米ドル(約2460万円)にもなるという。しかも日本語は話せない。
それでも「経済的には厳しいが、1人でも多くの人を励ますことができるなら、何よりうれしい」と屈託がない2人。絵やフラダンスを被災者たちに教え寄り添い続けることが、何よりの支えになると信じている。
「たくさんの災害を見てきたが、東日本大震災の被害ほど、ひどいものは見たことがない」。こう話すのは、家族ぐるみで被災地での支援活動を続けている米ジョージア州のグレッグ・トンプソンさん(57)。妻(57)と、震災直後の昨年3月下旬に被災地を訪れ、12日間の支援活動に参加。その後も9月に10日間、10月にも1週間、被災地を訪れた。息子のウィルさん(23)も大学の休みに3週間、岩手県でボランティア活動を行ったという。
世界中の被災地を訪れた経験があるグレッグさんは、人手が不足する活動も心得ている。昨年3月の訪問時には、原子力発電所の事故の影響でボランティアの希望者が少ない福島県での活動を志願。いわき市の避難所に食料などを届け続けた。
「私たちの力は小さいかもしれないが、1人でも助けられればと思う。まだまだ支援は必要。米国の人々にも決して忘れてほしくない」とグレッグさん。今年9月にまたボランティアに訪れるつもりだという。