安全神話への執着原因 政府事故調、官邸・東電を批判
福島原発ニュース
日本経済新聞 2012/7/23
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG2300D_T20C12A7MM0000/
東京電力福島第1原子力発電所事故の原因などを調べてきた政府の事故調査・検証委員会(畑村洋太郎委員長)は23日午後、最終報告書をまとめ、野田佳彦首相に提出する。被害が拡大した根源的な問題として「東電も国も安全神話にとらわれていた」と指摘。危機対策の練り直しを促した。一方、事故の直接原因は地震ではなく津波だったとの見方を示し、国会の事故調査委員会(黒川清委員長)と判断が分かれた。
政府事故調は昨年5月に設置され、中立的な立場で関係者からの聞き取りや現地調査などを進めてきた。昨年12月に中間報告を公表している。これで民間団体、東電、国会に続き、すべての事故調の報告が出そろった。検証結果は今後の原子力規制や防災の枠組みづくりなどに反映される。
今回の事故では、東電や官邸、原子力安全委員会などの対応のまずさについて「誰一人として役割を果たしていなかった」と断言した。原因として「深刻で過酷な事故は起こりえない」と考えていたと指摘、「危機を身近で起きる現実のものととらえていなかった」などと総括した。
事故後の東電の対応に関しては、2、3号機で原子炉注水が長時間にわたり中断したことなどを挙げ、「第2原発と比べ適切さを欠いていた」と結論づけた。また「事故から1年たってもなお、原因究明と再発防止の姿勢が不十分」などと東電の行動を問題視し、危機対応に関する教育や訓練の強化を求めた。
報告書は事故直後の官邸の対応についても厳しく批判した。菅直人首相(当時)による現場視察は「疑問が残る」とし、首相による現場への介入についても「弊害が大きい」などと断じた。東電が政府に原発からの撤退を申し出た問題については「十分な解明には至らなかった」などとして判断を避けた。
焦点となっている事故の直接の原因について、原発のデータを独自に調べ「(地震で)大きな損傷が生じたとは認められない」などと地震原因説を否定。地震後に発生した津波によって全電源が失われて原子炉が制御不能に陥り、大事故につながったと推定した。
事故原因をめぐっては、国会事故調が地震の段階で原発の機器が大きく破損した可能性を指摘している。仮に地震で機器が大きく破壊されたとすれば、現行の原発規制は根本的な見直しを迫られることになる。