定まらない日本の脱原発方針に疑問続出
福島原発ニュース
日本経済新聞 2012年10月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGV24003_U2A021C1000000/
日本政府が「2030年代に原子力発電所の稼働ゼロ」の方針を表明してわずか1カ月。政府が建設中の原発については工事継続を認める姿勢を示したため、政策転換の本気度に疑問の声が広がっている。
■着工済みの3基が脱原発の試金石に
Jパワーの大間原発では建設が再開された(10月10日、青森県大間町)=共同
これらの原発は昨年3月の福島第1原発事故の数年前に建設が認可され、事故後に工事が休止していた。今後の判断は、国内電力供給の30%をまかなってきた原発から本当に脱却できるかを示す試金石となる。
エネルギー・環境戦略を発表して以降、枝野幸男経済産業相は、着工済みの原発3基は「新増設を認めない」という方針から除外されると説明してきた。このうち1基を所有するJパワーは年内の工事再開を決めた。
段階的な原発廃止方針は、衆院選を意識した演出にすぎないとの批判もある。目標年限は曖昧で、政府は閣議決定を実質的に見送った。産業界の原発推進派からの圧力が強まるなか、「柔軟に」対応しつつ「検証及び見直しを続ける」とトーンダウン。原子力産業が存続する道を残したともいえる。
もっとも、今後、完成にこぎつける原発が何基になるかは不明だ。建設中の3基のうち、東通原発(青森県東通村)は福島原発事故で痛手を負った東京電力が所有しているからだ。
工事は10%程度しか進んでおらず、東電の経営問題の影響で再開の見通しは立たないと政府関係者はみる。一方、同じ青森県内でJパワーが所有する大間原発はおよそ40%の工事を終了。中国電力の島根原発は90%を終え、今年営業運転に入る予定だった。中国電力は今後の方針を明らかにしていない。
■理論的には両立するが…
理論的には、工事継続と段階的な脱原発を共存させることは可能だ。太陽光発電や風力発電などの代替エネルギーを開発する間、原発使用を続ければよいとも考えられるからだ。着工済み原発の完工を支持するグループは、これらの施設には最も安全な最新式の技術が導入されており、廃棄すればこれまでの数百億円の投資が無駄になると主張する。
一方、原子力政策を専門とする立命館大学の大島堅一教授は、今後の稼働コストを巡る不透明さが、原発推進の経済的根拠を乏しくするとみる。「安全対策強化に多くの費用がかかるようになり、事故が起きたときの保険の仕組みも定かではない。発電コストは大きく変わるだろう」と指摘していた。