福島第1「空冷式」を検討 汚染水の発生抑制へ 政府・東電
福島原発ニュース
産経ニュース 2014.1.6
政府と東京電力が、福島第1原発で溶け落ちた燃料(デブリ)の冷却に水を利用している現在の方式を改め、空気で冷やす「空冷式」を検討していることが5日、明らかになった。水冷式は放射性物質に汚染された水を生み出す原因ともなっており、空冷式が採用されれば、汚染水問題の抜本的な解消にもつながる。(原子力取材班)
東電によると、燃料は原発で使用後も熱(崩壊熱)を発し続けているが、この熱は当初の2千分の1以下にまで低減しているという。昨年12月現在では、1号機が150キロワット(蛍光灯1個分が30ワット)、2号機が200キロワット、3号機が190キロワットとの発熱量を測定。圧力容器下部温度は現在、20~30度で推移している。
燃料溶融(メルトダウン)した福島第1原発の1~3号機では現在、デブリを冷やすため1日400トンの水を注水している。ただ、「発熱量に比べ注水量が多く、数分の1で足りる」との試算がある。政府の廃炉対策推進会議でも、専門家から水による冷却方式に疑問の声が出ていた。
福島第1原発では、地下水が原子炉建屋に流入しているため、1日約400トンの汚染水を生んでいる。空冷式で燃料に触れる水量が少なくなれば、高濃度の汚染水を抑制することができる。地下水の流入を防ぐため、平成27年までには原発の周辺土壌を凍らす「凍土遮水壁」が完成予定で、空冷式が実現すれば、汚染水タンクの増量も防げる。
旧ソ連のチェルノブイリ事故(1986年)では、事故後の早い時期に燃料が空冷で固まり、汚染水に悩まされることがなかった。こうした事例を参考に、東電などはファンで側面から炉心に風を送る方策なども検討している。空冷でも周辺大気への影響は変わらないという。
東京大の岡本孝司教授(原子炉工学)は「デブリの発熱量は十分低い。温度やガスサンプリングの情報を監視しつつ注水量を減らしていき、最終的には空冷にすべきだ」と指摘する。
しかし、空冷式には課題もある。デブリの分布状況が特定できておらず、どこに空気を当てたらよいかの判断が難しいことだ。
原子力規制委員会の田中俊一委員長は「汚染水を減らすという意味で、いずれは空冷にした方がいい。しかし、溶けた燃料がどんな状態にあるか分からないので、なかなか簡単ではないと思う」と話している。